外務省専門職職員、そのいいところ

元外交官の方に小文を寄せていただきました。

「外務省専門職職員、そのいいところ」

 身分保証との観点から

日本では公務員のステータスは、一般的には悪くないと認識されています。職務の公共性、将来の安定性からしても公務員には社会における一定の評価が与えられています。さらに外務省員ともなれば、その業務の国際的性格や重要性から評価は一段と高く、外国においては、その職種は外交官として広く認知され、外交業務を行う上での外交官に対するさまざまな特権免除が国際条約により付与されています。外務省の専門職となることで国の内外において明確な身分保証が与えられています。

 やりがいのある仕事

外務省の仕事は実にさまざまです。相手国との政治・経済・文化などの関係を図ることとか、国連や国際組織での多数国間交渉、条約締結、邦人の保護などといったあらゆる業務をカバーしています。新人は入省時に専門語を割り当てられるが、専門職は英語や仏語、独語といったメジャーの言語よりも全世界のマイナーな言語の研修を命じられるケースが多い。これにより外務省は多くの専門語のエキスパートを抱えることになり外交力の強化に寄与しています。専門職職員は基本である英語力につき仕事をしながら強化しつつ、専門語の実力をつけていくことが要求され、上記の外務省に委ねられているさまざまな業務を遂行していくことになります。仕事は山ほどある。それを生かすも殺すも本人次第なところが外務省の体質としてあるのではないかと思います。かなり重要な仕事が任される場面があり、しかもかなりの部分、担当者の力量が発揮される部分が多いのではないかと思います。要するにこの役所は誇りを持ってやりがいのある仕事ができるという組織であり、さらに上昇志向のある人は能力というよりもある種の幸運に恵まれればそこそこの国の大使あるいは本省におけるそれなりの幹部に就くことも可能です。

様々なひととの出会いがある

世界には190を超える国があり、そこには日本の大使館や領事館が存在しているところも多い。外務省員になればいずれかの公館に配属されることになるが、そこには肌の色、考え方、宗教、文化的背景その他さまざまな背景の異なる人々が住んでいて、好むと好まざるとに拘わらずそうした人々と接触することになります。中には言葉を交わすのもはばかられる輩もいますが、素晴らしい人々との交流は何にもまして貴重な体験です。こうした交流により一人の人間としての深み、幅を広げられるのではないかと思います。なかには外国人の生涯の友を得たという仲間もいるし、配偶者も見つけたという人もいます。

 ディスカバー日本

日本にいては日本は見えない。外にでて初めて日本の姿を客観的に見ることができる。ちょうど宇宙から地球の球体が認識できるのと同様に地上にいては地球が丸いということを認識するのは難しいのと同様です。日本の常識は世界の非常識。日本の普通が世界では素晴らしいということが最近認識されつつあるりますが、これは外国人が日本の素晴らしい点を強力に発信したからです。国際社会における日本の姿は、ある意味ナイーブで一般国際常識からは浮世離れしているところもありますが、日本を知らなければより良い日本にすることは不可能です。さまざまな国で生活し、現地の人々の生活態度に触れることにより、国際的な目から客観的な日本の姿を見ることができるだろうと思います。

 未知の国を知る

専門職の重要なフィールドは中小国にあります。ヨーロッパでいえば北欧諸国、中・東欧諸国、ロシア、その他中南米、アジアの国々など。それら諸国はあまりこれまで日本で紹介されることは少なく未知の部分も少なくないでしょう。多くの場合、そうした国の専門家としての人生を歩み、その生活の重要部分を当該国で送ることになります。こうしたエキスパートは日本では希少でありそれだけでも価値があります。現地では、中小国であるがゆえに世界史の授業では、習うことのなかったもう一つの歴史を知ることになる。これが歴史好きにとっては本当に面白く、(歴史に絡んだ)文学、民族音楽、衣装、料理、自然を知ること、現地で盛んなスポーツ観戦や参加等、楽しいことがふんだんにあります。

 公のための仕事

専門職に限らず公務員というのは私利私欲のために働く人種ではありません。国のため、人のためという大きな理想に燃えた人たちが公務員としての真の姿だと思います。専門職に合格し、将来の外交官として大きな夢を描いている若者は上記の点をくれぐれも心に刻んでほしいと思います。外交官の仕事を遂行している際には、いつか必ずこれが日本のため、人のためという大義を問われる場面に遭遇するはずで、その際にこの仕事が本当に自分がしたかったこと、しなければならないこと、と認識できるでしょう。そうした極限状態の仕事をできるのが外交官だと思います。

 

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