<特集>

シンガポールと
自由貿易協定


 2002年1月13日、日本は初めて自由貿易協定(FTA)をシンガポールとの間で締結した。締結の「署名」をしたのは、東南アジア諸国連合(ASEAN)歴訪中の小泉内閣総理大臣だが、その締結に至るまでのさまざまな研究、交渉をねばり強く進めてきたのは、「公務員」たちだ。新聞報道などでは、シンガポールは日本との農作物の取引の割合が少なかったため実現できたが、農作物の自由化が争点になると第2、第3とは続かないのではないかといった議論に移っているが、今回の調印もそんなに簡単でなかったことは容易に想像できる。担当の公務員たちが、日本の通商政策を真剣に考え、検討し、日本をどうするかという気概のもと奮闘しているのだ。2国間FTAをさらに進めることで人材、資本、モノの移動がさらに活発になり国内経済の高度化を促し構造改革につなげていくと考えているそうだ。これが公務員の仕事だ。
 学生諸君と話しているとすぐにそれは国Tではとか、国Uはどうだとかいう話が出てくるが、実際の現場で問われるのは、そんなことよりも本気で日本のこと、国民のことを考え、一生懸命取り組んでいるかどうかだ。国Tや国Uということが本当にその障害になるなら、まずはその制度こそを変えていくと提案し、実行していけばいいではないか。


日・シンガポールFATの主な内容

@関税の相互撤廃

Aサービス事業の参入自由化
 ・新たに日本が32分野、シンガポールが77分野の自由化を約束

B投資の自由化
 ・相手国企業を国内企業と平等に扱う「内国民待遇」を保証し輸出や技術移転などを義務づけないことを約束

C電気製品・通信機器に相互認証制度を導入
 ・輸出国が行った安全性検査を輸入国が自動的に認証

D特許制度の連携
 ・日本で取得した特許をシンガポールが簡単な手続きで承認

E大学の単位の相互承認
 ・慶応大学、九州大学はシンガポール国立大学、広島大学が南洋工科大学との間で実施

F証券取引所間の連携
 ・東京証券取引所とシンガポール取引所が互いの上場商品を取引できる相互接続を検討

G資格の相互認証
 ・医師・歯科医について部分実施し、土木工学の技術士も検討

(日経新聞1/14号より)