特集 経済科目の学び方(2)
公務員試験の中では、法律科目と並んで出題が多い科目が「経済」です。経済を習得することで、上位合格を目指すことができ、また受験できる試験が広がります。ぜひ、経済を得意科目にしてください!今回は経済の学び方の後編です。前号(11/3号)からお読みください。

 経済学を
 学ぶにあたって 

(2)経済学の目的
 経済理論では、日常使わないような専門用語が数多く使われます。理論は分析の道具であるため、その道具の仕組みを把握しうまく使いこなしてこそ経済についての理解を深め、応用力を養うことができます。したがって、まずは経済用語を正しく理解することが必要です。ただし、それらの用語は当然のことながら経済活動に関係するものであるから、実際の経済活動を連想し、わかりやすい言葉に置き換えて理解するとよいでしょう。
 たとえば消費者の理論において、「効用」という概念が出てきますが、これは「消費の満足度」を表す用語です。リンゴ1個の効用とは、リンゴ1個を消費するときの満足度(満足感)を意味します。
 理論の理解の一歩は、まず経済用語の正しい理解とそれに慣れることからです。

(3)抽象的な分析方法に慣れる
 経済学では、複雑な経済のしくみを簡潔に表現するため、理論モデルが構築されます。すなわち、ある経済現象を説明するのに、重要な部分だけを抜き出し、それ以外の多くの要因はとりあえず無視する(一定不変と仮定)、といった具合に単純化を行います。理論、すなわち経済モデルは、実際に空を飛ぶ旅客機に対する模型飛行機のようなものです。
 たとえば、経済理論に出てくる以下のような表現に、少しずつ慣れていくとよいでしょう。

(i)モデルの単純化
 基本的に理論とは、ある「仮定」のもとで構築されます。たとえば消費理論において「2つの商品だけ存在し、消費者はそれぞれ何個購入するかを選択する」といった具合です。

(ii)経済用語
 専門用語を理解します。たとえば、
 ・さまざまなモノ
 (生産物、商品)
    ↓
  財・サービス

 ・具体的なモノ
 (リンゴ、車、パンなど) 
    ↓   
  X財、Y財

 ・モノの値段 
    ↓
   価格
 というような表現となります。

(iii)関数の理解 
 経済理論では、2つ、あるいはそれ以上の経済変数間の関係を表現するのに、「関数」(○○関数)を使います。たとえば、
・効用関数
・費用関数
・需要関数と供給関数
など、他にもたくさんあります。この関数関係では、「何と何のどのような関係を表しているのか」を理解することが大切です。
 たとえば、効用関数とは、ある消費財(リンゴやミカン)の個数と、それを消費して得られる満足度との関係を表したものを意味します。

(iv)式の理解   
 理論モデルにおいては上記のような関数、あるいは均衡条件式などを、より具体的に数式で表現していきます。たとえば、
・需要関数:
  D=D(p)
   ↓
  D=−p+10

 は、ある財についての価格pと需要量Dとの負の相関関係を表したもので、より具体的に線形関数(直線の形)で表現することができます。
 また、ある財の需要量Dと供給量Sについての市場均衡条件式は、
・均衡条件式:
  D=S

 という具合に、需要量Dと供給量Sが等しいことを表現したものです。

(v)図の理解   
 上記のような関数関係を、今度は図(通常は平面図)で表現していきます。たとえば先の需要関数、D=−p+10 を変形すると
・需要関数:
  p=−D+10

 となりますが、これは、縦軸に価格p、横軸に需要量をとった場合、右下がりの直線として描かれます(価格と需要量は負の相関関係)。これが、図を使った分析で用いられる需要曲線です。
 図(グラフ)では、縦軸、横軸が何の単位を表しているか、縦軸と横軸の相関関係はどうなっているか、に注意することが大切です。

 カリキュラムの構成と
 学習の仕方
 
(1)カリキュラム
 喜治塾では、経済原論(ミクロ経済学、マクロ経済学)を中心に経済系科目を対象とした学習を進めていきます。理論をしっかりと身につけることで、経済政策や財政学の分野で出題される問題へも対応できます。財政学における財政理論および財政事情、教養科目でも出題される経済事情といった分野については、試験直前に「暗記」を中心に学習します。また、経済学説史については、理論と並行して、それに関連する経済学者の名前とキーワードを少しずつ覚えていくことで、最終的には公務員試験で出題される多くの経済学者の名前および学説を、身につけることができます。
 さて、経済原論のカリキュラムは、3つのレベルから構成されています。

 ■ レベル1
 レベル1は「入門編」です。ここではミクロとマクロの基本的な理論をしっかりと学習します。ここで学ぶ経済用語、基礎概念、条件式などは、次のレベル(レベル2、レベル3)へ進むために必要な最初のステップです。論理的な思考力が求められる経済理論を理解するうえで、その学び方に慣れるという意味でも、とても重要な部分です。

 ■ レベル2
 レベル2では、レベル1での基礎概念をふまえたうえで、より数学的な手法を取り入れた理論、つまり、公務員試験の問題でいうところの、「計算問題」の解法を習得します。ミクロ経済学では、消費者や企業の最適化行動に関する計算問題を、微分や偏微分を使って解いていきます。数学的には一見難しそうですが、公式を当てはめていくという技術的な作業ですので、それをマスターすると計算も楽しくなってきます。マクロ経済学では、レベル1での理論モデルをさらに拡張して、財政・金融政策に関する議論を深めていきます。
 東京都特別区、東京都庁および市役所の問題は、このレベルである程度解くことができます。また、国家種や地方上級レベルでの出題頻度の高い問題も、このレベルに含まれます。

 ■ レベル3
 レベル3では、レベル2までに含まれない試験対象範囲で、過去の出題頻度をふまえたうえで、さらにレベルアップしていきます。ミクロ経済学では、より高度な消費者の最適化行動や、生産においては不完全競争的企業(独占や寡占など)の理論、マクロ経済学では、為替レートの決定理論など国際経済・国際金融に関する問題や経済成長論、景気循環論などです。
 レベル3の学習は、自分の出願希望順位を考えて行う必要があります。たとえば、東京特別区が第一志望であれば、レベル3では必要ないものが多くありますので、効率のよい学習のためには相談ののうえ、戦略を練った方がよいでしょう。

(2)教材と学習の仕方
 経済系科目は、基本的には以下のような教材を使って効率よく学習していきます。
 1 テキスト
 2 チェック・シート
 3 学説史
 4 クイズと練習問題
 5 確認テスト
 6 演習問題

 各回の講義で上記の1から4までが配られます。まず、1テキストは、講義の内容をまとめたものです。講義では「理解すること」が重要ですので、できるだけ板書するより(すでにテキストに書いてある図と同じものを黒板に再現して講義がすすめられます)、しっかりと大切なところを聞きのがさないように注意し、重要な部分だけノートやメモをとっていきます。
 2チェック・シートは、その回の講義で出てきた主要な概念を列挙したものです。毎回の講義において、最低限チェック・シートにある概念については理解していくという目的で用意されています。また、試験直前の概念把握にも役にたちます。
 3学説史は、その回に関連する経済学者や、あるいは時代ごとの学説について、1ページほどの分量でまとめたものです。経済学者の名前とそれに関連する「キーワード」をいくつかセットにして、少しずつ覚えることが、学説史の問題を解くためのコツです。
 講義が終了後、4クイズと練習問題が配られます。クイズは、その回の重要事項がきちんと理解できたかどうかを、クイズ形式で問題にしたものです。チェック・シートと併せて、基本概念の確認をしていきます。練習問題は、その回の内容についての実際の過去問をふまえて、択一形式でつくられています。これは、実際の択一問題に慣れるということと、出題のパターンを把握するという目的でつくられています。クイズと練習問題は、その回の講義の後、必ずやること(できればその日のうちに)が大切です。
 5確認テストは、過去問を中心につくられたもので、次の回の講義の前に、前回の講義内容を確認するために行います。確認テストには、前回の講義の1から4までの教材を復習したうえで臨みます。また、確認テストで間違った問題は、その都度、理解していくことが大切です。
 さらに、数週間ごとに行われる6演習問題では、カリキュラム上それまで学習したすべての科目の範囲について、公務員試験の択一問題形式で模擬試験を行います。経済科目については、4練習問題や5確認テストをきちんとやっておくことで、ほとんどパーフェクトに解くことが出来ます。
こうした一連の作業を毎回続けることで、理論についての理解が深まり、経済系科目の問題が解けるようになります。大切なのは、流れに逆らうことなく、教材がねらいとする学習方法に従うことです。

 最後に

 みなさんにとっての限られた時間や予算(希少資源)は、大切なものであるはずです。このように大切な時間を無駄に使ってはもったいないです。公務員試験のための経済学の勉強は、同じ時間をかけたとしても、そのやり方次第では、とても効率が悪くなかなか成果がでないものになってしまう可能性があります。他の科目についても同じことがいえるでしょう。
 効率的な学習の流れを一度体験してみてください。